落日燃ゆ
第二次世界大戦A級戦犯、元総理、外相広田弘毅の物語。
誰よりも平和的な解決を願いながら、
軍の横槍によって、自分の願いをかなえることができなかった。
結果的には南京事件の虐殺を止めなかったと不作為の責任を問われ、
皮肉にも、在任時代対立していた軍人達とと同じように、絞首刑に処せられた。
(文民で絞首刑になったのは広田一人のみ)
ものすごく理不尽な仕打ちである。
理不尽なのではあるが、その理不尽を受け止め、
自己弁護に走ることなく、ただ自分の運命を受け入れる。
広田の生き方を、小説では「自ら計らず」と一言で述べられている。
それは決して、自分を引っ込めて状況にすべてをまかせるということではない。
あくまで自分の考えを主張した上で、生じる結果についてはそれをそのまま受け止める。
(裁判では広田は黙秘を貫いたが、その黙秘こそが広田の主張である)
こういうことを小説の中ではさらりと書かれているが、これがものすごく難しい。
そして、男として美しいような気がする。
美しいような気がするが、私ならやはり、
「ボク知りません、ボクやってません。悪いのはみんな軍です。」
とわめきちらし、ひたすら自己弁護を計り、ずぶとく生き残っていきたい。
こういう死を美徳とする考えは、昭和の初期で終わりにしたいものだ。
男の生き様、死生観、いろいろ考えさせられたわけであるが、
私としては、結局のところ「かっこ悪くても、ずぶとく生きていく人間でありたい」と思うわけであった。
by gossy54200 | 2010-02-22 23:12 | 読書