人気ブログランキング | 話題のタグを見る

人はどこまで普通列車に耐えることができるか(その4)

その0 その1 その2 その3

「ラーメン大王 東室蘭西口店」に入る。
入った瞬間、猛烈な勢いで眼鏡が曇り、何も見えなくなった。
眼鏡を外すと、厨房にはラーメン一筋30年という雰囲気が漂う、頑固そうなオヤジがいた。
カウンター席に陣取り、オヤジの迫力に負けないように
大きな声で「カレーラーメン」と注文した。

待つこと、5分ほど。
無愛想な「へい、お待ち!」という声と共に、カレーラーメンがやってきた。
人はどこまで普通列車に耐えることができるか(その4)_a0156548_1447611.jpg

は?「へい、お待ち!」だあ?

これは一体、どこの昭和のホームドラマに出てくるラーメン屋ですか!

ここには、最近はやりのラーメン屋のように、店員がへらへらした笑顔で
「お待たせいたしました。みそになります」などと言ってラーメンを出す、客に媚びた感じは全くない。
「これがオレのラーメンだ。気に入らなかったら出て行け!」と言うすがすがしさが
「へい、お待ち!」という言葉に込められて潔い。
正に、ラーメン屋の真髄を見たような感じであった。

そんな店主の気持ちのこもったラーメンを、ずるずると食べる。
「む、熱い、辛い」
汗がダラダラ出てくる。あちー、あちー。
凍てつく寒さの中で、カレーラーメンの熱さが体中に染み渡る。
うん、満足、満足。

満足したのであるが、一言言わせてくれ。
レジのバイト君よ、客の金を受け取るときは両手で丁寧に受け取りなさい。
(こういう細かいところにうるさい私)

「ひとり飯は、食べ物の味そのものよりも、その店の持つ雰囲気を味わうものだよな」
そんなことを感じてしまった、味の大王東室蘭西口店であった。
また、昭和の気分に浸りたいときに行くことにしよう。

東室蘭から、17:35発長万部行に乗ります。
人はどこまで普通列車に耐えることができるか(その4)_a0156548_1584729.jpg

ディーゼルカー2両の列車は、部活帰りの高校生で思ったより混んでいた。
ピーチクパーチクやかましかったが、そこは寛大な私である。
かわいい女子高生だったので、何もかも許してやることにした。

3冊目の読書。荻原浩「神様からひと言」
人はどこまで普通列車に耐えることができるか(その4)_a0156548_15123241.jpg

ただのドタバタコメディかと思ったが、最後はちょっとしんみりしていい感じだった。
奥田英朗好きなら、荻原浩もいけると思う。
こういう文体を、自分の文章にも取り入れてみたいなあ。

豊浦過ぎてからはガラガラ。ビバ、ローカル線。
人はどこまで普通列車に耐えることができるか(その4)_a0156548_15172425.jpg

日本一の秘境駅でマニアには有名な小幌駅も
この暗さではなにがなんだかよくわからず、イマイチ。
今度、明るいときに行くことにしよう。

途中、意識が遠のきながら、長万部到着。
人はどこまで普通列車に耐えることができるか(その4)_a0156548_15203066.jpg

まあ、長万部駅は、せたな出張で毎月のように行ってるし、特にこれと言ったものはない。
小樽周り札幌行きの普通列車に乗り換え。
人はどこまで普通列車に耐えることができるか(その4)_a0156548_15215320.jpg

函館から来る特急が遅れまくっていた関係で、20分ぐらい足止め。
本に没頭していたので、そこは気にしない。

この列車も素敵なぐらいガラガラだった。
人はどこまで普通列車に耐えることができるか(その4)_a0156548_15251250.jpg

3両編成だったのだが、あまりに人がいないためなのか
後ろの1両にロープが張られていて、人が入れないようになっていた。

いいなあ。こののどかな感じ。
暗闇の中、ガタンゴトンと揺られながら、ディーゼル列車に身をまかせる。

ふと、思った。

「ワンカップが飲みたい」


この列車に似合うのは、ビールでも焼酎でも、ましてや年代もののワインではない。
ここではハンティング帽をかぶって、競馬新聞を片手に、ワンカップを飲むものなのだ!
(耳に赤鉛筆をはさめていると、なおよい)

あー、これだけワンカップが似合う場所なのに、どうしてオレは酒が飲めないんだろう。
このときほど、自分の酒の飲めない体質が憎らしいと思ったことはなかった。
人はどこまで普通列車に耐えることができるか(その4)_a0156548_15312920.jpg

いや、ホントにココアなんて、お子ちゃまの飲み物を飲んでいる場合ではないでしょう。
酒を飲まないか!酒を!
(この時点で、クリスマスイブの自己嫌悪のことは忘れた)

ということで、本日4冊目の読書は、内田百閒「第二阿房列車」。
無意味な汽車の旅のときは、無意味な汽車の旅行記を読むのがいい。
相変わらず、内田先生とヒマラヤ山系氏のかみ合わない会話がステキである。

小樽到着。
ここで、ワンマン列車モードは終了し、一番後ろの車両も開放され
人がドカドカと乗り込み、ローカル線の旅情は終わった。

そういえば、8月だったなあ。
キャンプの帰り、輪行袋コクーンを抱えた、真中瞳に似たかわいい女の子を小樽駅で見かけたのは。
今ごろ、彼女はどこで何をやっているのだろうか?
似ている人の目撃情報があれば、私のところまで。

小樽からは、汽車は通勤列車の雰囲気に打って変わり、もう旅は終わったなあと。
後は桑園で乗り換えて、新川に戻って、0時10分ごろ、約18時間に渡る、長~い冒険は終わった。

「ゆっくり本が読めてよかったなあ」ということ以外は、まあ、これといった感想は特にないのだが
自転車で走り回ることができない以上
冬の間は、こういう路線に楽しみを見出していこうと思いつつ、今回の日記を終わる。

(このシリーズ終わり)

by gossy54200 | 2010-12-30 15:45 | 日記  

<< ブラックチェリー会 人はどこまで普通列車に耐えるこ... >>