人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ただバスに乗るためだけに終点まで走る(その2)

その1

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ただバスに乗るためだけに終点まで走る(その2)_a0156548_15593625.jpg

一体、私は何をやっているのだろうか?

道路は歩道がなくなり、車一台分しか通れない幅になった。
吹雪はますます激しくなってくる。
眼鏡に雪がまとわりついて、前はほとんど見えない。
仕方がないので、眼鏡を外して、手に持ちながら走ることにした。

しかも、思いっきり向かい風で、風と雪が顔に激しく当たり
寒いを通り越して痛い、めちゃくちゃ痛い。
痛くてやってられないので、風を避けるべく後ろ向きに走っていたら
通りかかる車が、「お前、何アホなことやってるんだ」と言わんばかりにクラクションを鳴らしてきた。

私はただバスの終点まで行きたいだけなのに
どうしてこんな苦労をしなければならないのだろうか?
こんなことまでして、私はバスに乗りたいわけではないのだ。
ホントにこれはしゃれにならん。

何も冬山登山をしているわけではないのだ。
ただ、公道を歩いているだけで、どうして遭難寸前の憂き目に逢わなければならないのか?
これがせたなの真の力なのか。
恐るべし、道道740号線。

人家が見えてちょっとホッとしたが、やはり前が見えず、風雪が顔に当たりまくる。
ただバスに乗るためだけに終点まで走る(その2)_a0156548_16141618.jpg

ああ、トンネルだよ。風と雪が防げるよ。めっちゃうれしいよ。
ただバスに乗るためだけに終点まで走る(その2)_a0156548_16164593.jpg

しかし、トンネルを抜けると、そこは雪国を通り越して・・・・・・、ただの地獄だった。
ただバスに乗るためだけに終点まで走る(その2)_a0156548_16203674.jpg

もう、走ることなんてどうでもいい。
とぼとぼと歩いてバス停を目指すことにした。
ここまで来たら、もう意地だ。

鵜泊築港・・・。お、ゴールの鵜泊団地前までもうすぐだ。
ただバスに乗るためだけに終点まで走る(その2)_a0156548_16234241.jpg

しかし、ここで困ったことが起こった。
道が分かれ道になったのだ。
左へ行くと山道、右へ行くと港に出る。

さあ、どっちへ行くべきか。
鵜泊団地というぐらいだから、おそらく家が何件かあるようなところだろう。
となると、山を行くよりも、港に行った方が勝算はあるのではないだろうか。

よし、港へ行こう。
ただバスに乗るためだけに終点まで走る(その2)_a0156548_16282135.jpg

やはり、前は見えない。
団地らしきものは全く見えない。
当然、バス停も発見できない。

10分ぐらい、猛吹雪の中をさまよっただろうか。
ここで、心がポッキリ折れた。

「よし、来た道を元に戻ろう」

すでに山道の方を確かめる気力は残っていなかった。
(後で地図で調べてみたら、山道の方が正解だった。相変わらず勘が悪いんだよなあ)

来た道を引き返す。
風は後ろから当たるようになったので、さっきよりは楽だ。
とは言え、道は狭いし、雪が積もって歩きにくいし
一体どうしてこんなことをしているのか、大いに意味不明であった。

30分ぐらい歩いただろうか。
雪が弱まり、適当なバス停があったので、ここでバスを待つことにした。
ただバスに乗るためだけに終点まで走る(その2)_a0156548_1641307.jpg

停留所の名前は読めないが、私はこのバス停のことを生涯忘れることはないだろう。

バスがやってきた。
ただバスに乗るためだけに終点まで走る(その2)_a0156548_16454034.jpg

今まで生きてきた中で、これほどバスがすばらしい乗り物だと思ったことはなかった。
ただバスに乗るためだけに終点まで走る(その2)_a0156548_16473159.jpg

客は私一人だけであった。
おそらく、このバスを日常的に利用している人など、ほとんど存在しないのであろう。
「お年寄りには席をお譲りください」というテープの案内が、むなしく車内に響いた。
誰も客のいないこの路線で、果たして、お年寄りに席を譲るような場面が出てくるのであろうか?

来る日も来る日も、誰も乗客のいないバスを走らせている運転手の気持ちになると
なんだか、胸にグッと来るものがこみ上げてくるような気がしないでもない。

途中、背負越(せおいごし)という力強そうなバス停があったこと以外は
特に何事もなく、終点の北檜山まで到着した。

最後に運転手さんがマイク越しに
「どなた様も、滑りますので足元にはお気をつけください」と言っていたが
どなた様も何も、客は私一人だけだ。
多分、客が誰もいない状況でも、決まり文句のようにしゃべっているのだろうなあ。

420円を払ってバスから降りた。
ありがとう、函館バス、ならびに運転手さん。
バスに乗ってる時間は20分ぐらいだったけど、心に残るバス旅行だったよ。

腹が減ったので、飯を食うことにした。
ただバスに乗るためだけに終点まで走る(その2)_a0156548_1713355.jpg

カツカレー(650円)。
ただバスに乗るためだけに終点まで走る(その2)_a0156548_172738.jpg

これがもう、田舎の食堂に出てくる典型的なカツカレーとしか形容できないほど
びっくりするぐらい普通のカツカレーだった。

ごちそうさま。
でも、そんな普通のところがたまらなくよかったよ。

そして、ホテルに戻り、死ぬほど温泉を満喫して
この無意味な一日の喜びをかみしめたのであった。

結局、目的である、バスの終点まで行くということはできなかったが
きっと、北海道マラソンとかで、「もうだめだ。棄権したい」と思ったとき
「いや、あの日の猛吹雪の中走ったことに比べたら、まだまだ頑張れる!」と
自分を励ます意味では、何らかの役に立つのではないかと思われる、そんな一日。

走行距離 12kmぐらい
消費カロリー 864kcal

(このシリーズ終わり)

by gossy54200 | 2011-02-12 17:11 | ランニング  

<< 三本杉岩を目指して走る ただバスに乗るためだけに終点ま... >>