ただバスに乗るためだけに終点まで走る(その2)
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一体、私は何をやっているのだろうか?
道路は歩道がなくなり、車一台分しか通れない幅になった。
吹雪はますます激しくなってくる。
眼鏡に雪がまとわりついて、前はほとんど見えない。
仕方がないので、眼鏡を外して、手に持ちながら走ることにした。
しかも、思いっきり向かい風で、風と雪が顔に激しく当たり
寒いを通り越して痛い、めちゃくちゃ痛い。
痛くてやってられないので、風を避けるべく後ろ向きに走っていたら
通りかかる車が、「お前、何アホなことやってるんだ」と言わんばかりにクラクションを鳴らしてきた。
私はただバスの終点まで行きたいだけなのに
どうしてこんな苦労をしなければならないのだろうか?
こんなことまでして、私はバスに乗りたいわけではないのだ。
ホントにこれはしゃれにならん。
何も冬山登山をしているわけではないのだ。
ただ、公道を歩いているだけで、どうして遭難寸前の憂き目に逢わなければならないのか?
これがせたなの真の力なのか。
恐るべし、道道740号線。
人家が見えてちょっとホッとしたが、やはり前が見えず、風雪が顔に当たりまくる。
ああ、トンネルだよ。風と雪が防げるよ。めっちゃうれしいよ。
しかし、トンネルを抜けると、そこは雪国を通り越して・・・・・・、ただの地獄だった。
もう、走ることなんてどうでもいい。
とぼとぼと歩いてバス停を目指すことにした。
ここまで来たら、もう意地だ。
鵜泊築港・・・。お、ゴールの鵜泊団地前までもうすぐだ。
しかし、ここで困ったことが起こった。
道が分かれ道になったのだ。
左へ行くと山道、右へ行くと港に出る。
さあ、どっちへ行くべきか。
鵜泊団地というぐらいだから、おそらく家が何件かあるようなところだろう。
となると、山を行くよりも、港に行った方が勝算はあるのではないだろうか。
よし、港へ行こう。
やはり、前は見えない。
団地らしきものは全く見えない。
当然、バス停も発見できない。
10分ぐらい、猛吹雪の中をさまよっただろうか。
ここで、心がポッキリ折れた。
「よし、来た道を元に戻ろう」
すでに山道の方を確かめる気力は残っていなかった。
(後で地図で調べてみたら、山道の方が正解だった。相変わらず勘が悪いんだよなあ)
来た道を引き返す。
風は後ろから当たるようになったので、さっきよりは楽だ。
とは言え、道は狭いし、雪が積もって歩きにくいし
一体どうしてこんなことをしているのか、大いに意味不明であった。
30分ぐらい歩いただろうか。
雪が弱まり、適当なバス停があったので、ここでバスを待つことにした。
停留所の名前は読めないが、私はこのバス停のことを生涯忘れることはないだろう。
バスがやってきた。
今まで生きてきた中で、これほどバスがすばらしい乗り物だと思ったことはなかった。
客は私一人だけであった。
おそらく、このバスを日常的に利用している人など、ほとんど存在しないのであろう。
「お年寄りには席をお譲りください」というテープの案内が、むなしく車内に響いた。
誰も客のいないこの路線で、果たして、お年寄りに席を譲るような場面が出てくるのであろうか?
来る日も来る日も、誰も乗客のいないバスを走らせている運転手の気持ちになると
なんだか、胸にグッと来るものがこみ上げてくるような気がしないでもない。
途中、背負越(せおいごし)という力強そうなバス停があったこと以外は
特に何事もなく、終点の北檜山まで到着した。
最後に運転手さんがマイク越しに
「どなた様も、滑りますので足元にはお気をつけください」と言っていたが
どなた様も何も、客は私一人だけだ。
多分、客が誰もいない状況でも、決まり文句のようにしゃべっているのだろうなあ。
420円を払ってバスから降りた。
ありがとう、函館バス、ならびに運転手さん。
バスに乗ってる時間は20分ぐらいだったけど、心に残るバス旅行だったよ。
腹が減ったので、飯を食うことにした。
カツカレー(650円)。
これがもう、田舎の食堂に出てくる典型的なカツカレーとしか形容できないほど
びっくりするぐらい普通のカツカレーだった。
ごちそうさま。
でも、そんな普通のところがたまらなくよかったよ。
そして、ホテルに戻り、死ぬほど温泉を満喫して
この無意味な一日の喜びをかみしめたのであった。
結局、目的である、バスの終点まで行くということはできなかったが
きっと、北海道マラソンとかで、「もうだめだ。棄権したい」と思ったとき
「いや、あの日の猛吹雪の中走ったことに比べたら、まだまだ頑張れる!」と
自分を励ます意味では、何らかの役に立つのではないかと思われる、そんな一日。
走行距離 12kmぐらい
消費カロリー 864kcal
(このシリーズ終わり)
by gossy54200 | 2011-02-12 17:11 | ランニング