今まで食べた中で二番目にまずいラーメン屋(その2)

その1

ラーメンがやってきました。

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スープはどろっと濁った感じで、昔ドラえもんに出てきた「ジャイアンシチュー」を連想させる。
ドバっとかけられている粉の正体は何なのだろうか?
特にキョーレツなチーズ臭がするということはなかったですね。
ビジュアル的には、「うん、これならそれなりに食えるんじゃないか」と。

では、いただきます。



??

???


何なのだ?この味は?
ものすごく深みがあるようで、口の中に残るような感じ。
ああ、チーズだなってのはわかるんだが、くどいような感じはしない。
焦げ目の入った麺の食感はよい。
ただ、複雑に入り組んだ味で、理解するのに時間がかかる味だ。
ひとつ言えることは、「こんなの生まれて初めて」という味だということだ。

更に首をひねりながら食い進める。

食えば食うほど、よくわからん。
作りは丁寧な感じだ。
ひとつひとつのパーツは悪くない味だと思う。
しかし、これが化学反応を起こすと、全体としてバランスが取れていないような……。
うーむ、私の舌に問題があるのだろうか?

店主が私のそばにすり寄ってきて
「お味はいかがでしょうか?」
と聞いてきた。

こういうときは、嘘でも「うまい」と言えば、物事は円滑に進むということがわかっているのだが、私は心にもないことは口に出せない人間なので

「今までに食べたことがない変わった味ですね」

と、思っていることを正直に口に出した。
こういうところが、私が大多数の女性に人気がない理由であるとしみじみ思う。

店主は、じーっと食べている私を見つめている。
何を観察しているんじゃ、おっさん!
落ち着いてラーメンも食えんじゃないか。

あたかも看守に見守られている囚人のごとく、出されたものを食い続ける。
看守は「何か俺に話しかけてくれ」と言っているような瞳でこちらを見つめていたが、話しかけると3時間ぐらいは味のうんちくについて延々と語られそうだったので、全力で無視することにした。

食い続けても食い続けても、得体の知れない味が続く。
店主は相変わらず、「俺の作ったラーメンは世界一だろ」とこちらに訴えかけるような視線を送ってくる。
苦しい、ものすごく苦しい。

全く恋愛対象外の女性に、「どうして私はあなたのことがこんなに好きなのに、あなたは私をわかってくれないの?」と罵られているようで、苦痛な時間が淡々と過ぎていく。
こういう場合、「この女性を好きになれない私が悪いのか?」と自己嫌悪の気持ちに徐々に陥っていくわけだが、今の場合は

「この味を理解できない俺は馬鹿なんじゃないのか?」

と自分のバカ舌を責め続けるのであった。

ダメだ、ゴメンよ。
どうしてもキミのことが好きになれない。
私は狂った感性を持っているのではないか。


ラーメンを食いながら、徐々に人格が破壊されそうになっていく。
どうしてもラーメンのよさがわからない苦しみ。
俺だって、本当はラーメンのよさを理解したいんだよ。


こういうときはどうすればいいか?
それは自分の気持ちに素直になることだ。

そうだ、素直になろう。
自分に正直に生きていこうではないか。
相手のことはこの際どうでもいい。
まずは、自分の心の中を正直にのぞいていこうではないか。

素直になった結果、0.2秒で思った。





「マズイよ(`A´)。ああ、マズイよ!こんなもの食えるか!!!」

大体、このラーメンがうまいものだったら、他の店でも先を争って「焼きそばチーズラーメン」なるものをどーんと出して大流行するはずだ。
それが、この店のオリジナルで終わっているといこうことは、「真似をする価値のない味」だということで、世の中に見捨てられた味だと、簡単に結論づけることができる。
どうして、私はこんな簡単な不変の真理に気づかなかったのであろうか。
と言うか、こんな店話題に出すんじゃねえよボス!
ついでに、なぜ俺が「行きたい」と行ったとき、全力で止めんかったのか、Hよ!


《今回の教訓》

キワモノメニューは、他で真似する価値がないということだ。「この店でしか食べられません」メニューには気をつけろ。


マズイということがわかった今となっては、一刻も早くこの空間から抜け出したかった。
店主の執拗な監視にこれ以上耐えられなくなった。
店の空気が心なしか、チーズ色によどんで見えた。

ちなみにラーメンにかけられていた粉の正体は「シナモン」であり、これがより一層マズさを引き出していた。
H君の頼んだチャーハンにスープがついてきたが、これにもシナモンが振りかけられており、H君はスープを半分以上残した(チャーハンはそれなりに食える味だったらしい)。


まだラーメンはかなりの量が残っていたが、これ以上もう食えないと判断し、逃げるように会計を済まし、店を出た。
このときの安堵感は筆舌に尽くしがたい。
シャバの空気がこんなに美味しいと思ったことはなかった。
当たり前に生きていることのありがたみをしみじみと感じた。
無事に生還できただけで、私は満足だったのであった。
「世の中にはこういうところもある」と社会勉強をさせてもらった、土曜の昼下がりであった。


この後、口直しにケーキを食いに行こうとH君に誘われたので、「なぜ男二人でスイーツ?」と思いながらも、一刻も早く口の中をキレイにした思いもあって、土曜な貴重な午後の時間を野郎二人で過ごしたのであった。
甘くせつない、大人の時間であった。
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こんな社会勉強になるすばらしい店をこの世に広く知らせないわけにはいかないと思ったのであるが、どうやら最近の調査によると、これだけ魅力的な店だったにも関わらず、多くの人に惜しまれつつ、最近閉店してしまった模様である。
これは国家的損失である。


このことをボスに言うと。

「えーっ、○○なくなったの!春になったら食いに行こうと思ったのに。」


心にもないことを言うなボス!

(おわり)
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by gossy54200 | 2013-01-27 02:00 | 日記 | Comments(12)  

Commented by 店主A at 2013-01-27 09:55 x
私自身も「キワモノ」といわれるようなものに執着する癖があるので、このご指摘は肝に銘じなければなぁ、、。キワモノ、、が「先駆者」に代るように頑張りたいですね。
Commented by easy at 2013-01-27 13:38 x
あ゛~残念!
サイコロの目に、入れようと思ってたのに(マジ)。
さらなるキワモノレポの出現に期待します。
Commented by 通りすがり Q at 2013-01-27 20:58 x
冴え渡るgossyさんの文体、とても美味でした。
Commented by pen at 2013-01-28 10:21 x
楽しいレポートありがとうございました。 
しかし、残すってことはよっぽど・・・ 
暖かくなったらおいしいもの食べに出かけませんか?
Commented by gossy54200 at 2013-01-29 00:25
>店主Aさん

「キワモノ」には2種類あると思います。
まずひとつは「基本をしっかり身につけた」上で、違う新たな改良を加えまくった上での「キワモノ」。
もう一つは、最初から「基本が間違っている」方向に進んでいる「キワモノ」。
今回のラーメンについては後者のような気がしてなりません。
「キワモノ」に走るにしても、基礎はきちんと築かないといけないということを思い知らされた、今回の社会勉強でした。
Commented by gossy54200 at 2013-01-29 00:31
>easyさん

罰ゲームには最適のラーメン屋だと思います。
昔あったTV番組「タケシムケン」に出てくる「まずーいラーメン日本一決定戦」を思い出させるような味でしたね。
「どうしましょう新年会」で使ってみたいなどと、とんでもないことをちょっと思ったりしていましたが、残念です。
Commented by gossy54200 at 2013-01-29 00:39
>通りすがりのQさん

いえいえ、おそまつさまでした。
ネタ的にはこれだけ美味しいラーメンはなかなかないと思います。
Commented by gossy54200 at 2013-01-29 00:45
>penさん

味は言うまでもなく、あらゆる意味でキョーレツなラーメン屋でした。
暖かくなったらpenさんにも召し上がっていただきたかったのですが、非常に残念です。
それはさておき、春になったら美味しいものを食べに行きましょう!
Commented by siro_pug at 2013-01-30 00:04 x
ナントモ・・凄まじいレポート楽しかったです。
ラーメンを啜るうちに変節していくごしさんの内面の葛藤と固唾を呑んで見つめる店主氏の息詰まる攻防(0.2秒)が素晴らしかったです。
それにしてもシナモンは無いな・・・
Commented by gossy54200 at 2013-01-31 21:44
あの店主の方は間違いなく「いい人」とは思うのですが、うかつに近づいてはいけない不思議なオーラをかもし出していました。
今思い出しても、この世のものとは思えない、奇妙な空間でしたね。
調べたところ埼玉県に「シナモンラーメン」なるものが存在するようですが、その味はいかに?
うーん、首都圏に行く機会があったら、ちょっと試してみたいです。
(怖いもの見たさ)
Commented by yosi at 2013-02-01 19:17 x

好き嫌いではなく、美味しくないでもなく、ただひたすらにマズイものを自分は知っているだろうか(考えたけど思いつきませんでした)。そしておそらくはマズイものより美味しいもので溢れているはずの世の中にあってこの店の希少性にgossyさん同様に閉店の損失に嘆き、体験できなかったことを悔やむのは、今となってはそれを味わえないことを知っている安心感からでしょうか。
とても楽しかったです、ごちそうさまでした(*^^*)
Commented by gossy54200 at 2013-02-01 22:51
H君と話し合った結果
「この店主は実ラーメン屋の入ったビルの所有者で、ビルのテナント料で食っていて、ラーメン屋は趣味でやっている」
などの憶測も飛び交ったのですが、閉店という現実からそれも違うのではないかという気がします。

閉店という残念な結果になったのですが、いつかまた、どこかで店主が得体の知れないメニューをひっさげて復活して、「ダメだこりゃ」をもう一度しみじみと味わってみたいものです。

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